3Dプリンターはフィギアやスマホケース、アクセサリーなど身近なものからインテリア製品まで色々な立体物を制作できる夢のようなマシンです。クラフトなどものづくりが大好きな方にとっては、ぜひ手に入れてみたい機械ではないでしょうか。
でも3Dプリンターは紙に印刷するプリンターと違って、造形にかなり時間がかかることがあります。そのため毎日忙しくしている方にとっては、製作期間が気になることでしょう。
この記事では3Dプリンターで造形する時の制作時間の目安について説明したいと思います。
1.3Dプリンターはモノづくりにどれくらい時間がかかる?
3Dプリンターで造形物を出力する時にかかる時間は、後述するように色々な要素によって左右されます。制作時間の目安は実際に3Dデータと出力設定をしてみて初めて分かりますが、だいたいの目安をご紹介しましょう。「株式会社ポリ・スタジオ」のデータを参照して説明します。
以下の条件で出力したい場合の各プリント時間は以下の通りです。
1.直方体の場合
サイズ(mm):200×120×130
容積:3120cc
層の厚さ:0.20mm
充填率:15%
ヘッド動作速度:80mm/sec
プリント時間:67時間18分
株式会社ポリ・スタジオのデータ参照
2.たばこサイズの直方体
サイズ(mm):88×55×23
容積:111cc
層の厚さ:0.20㎜
充填率:15%
ヘッド動作速度:80mm/sec
プリント時間:2時間56分
株式会社ポリ・スタジオのデータ参照
3.たばこサイズの直方体(精細)
サイズ(mm):88×55×23
容積:111cc
層の厚さ:0.15㎜
充填率:30%
ヘッド動作速度:60mm/sec
プリント時間:7時間48分
株式会社ポリ・スタジオのデータ参照
4.たばこサイズの直方体(精細・縦置き)
サイズ(mm):55×23×88
容積:111cc
層の厚さ:0.15㎜
充填率:30%
ヘッド動作速度60mm/sec:
プリント時間:8時間27分
株式会社ポリ・スタジオのデータ参照
1の直方体を見ると、やはりサイズが大きい分制作にかなり時間がかかるのが分かりますね。
2~4番はそれより小さなサイズですが、形状は全く同じ3つの直方体を異なる3パターンで出力したケースです。2番が比較的短時間で製作できるのに対して、3と4番は何倍も時間がかかっています。これは2番と比べて層の厚さや充填率(造形物の中身の体積)、ヘッド動作速度(3Dプリンターが動く速さ)が高精度になるように設定されているからです。
2.仕事の速さとに影響する要素
3Dプリンターで造形物を製作する時は、できるだけ高品質な仕上がりで作りたいですよね。とはいえある程度短い時間で仕上げたいというのも本音ですよね。プリンティングの速さは以下のような要素に影響されます。
・積層ピッチ
3Dプリンターにおいて重要なキーワードの一つに「積層ピッチ」があります。3Dプリンターは素材を1層ずつ高く積み上げていって造形物を作るものですが、1層1層の厚みのことを積層ピッチといいます。よくある積層ピッチは0.3mm~0.1mmくらいですが、仮に10mmのものを0.1mmで出力する場合は100回積み重ねることになります。
曲面の表現では1層の厚みが薄いほど精度が高くなります。しかし積層ピッチが小さいほど制作時間もかかってしまいます。逆に積層ピッチが大きいとそれだけ3Dプリンターの稼働時間は短くなります。早く仕上げたければ精度が落ちて、精度をあげたければ時間をかける必要があります。
・ヘッドスピード
スペック表などで「mm/sec」と書かれている部分がありますが、、これはヘッドスピードの速さのことで、簡単に言えば印刷速度です。より短い時間で仕上げたい場合はこの部分を調整します。でも速くし過ぎると素材をマシンに引き込むのも速くなり、結果的に出力トラブルが出てしまうこともあるので要注意です。
・充填率(インフィル)
充填率は造形物の中身のことで、0~100%の間で設定しますが、0%だと造形物が中空になります(内部が空になる)。作るものの内容によって設定を変えても良いですが、充填率を高くすると強度が上がる一方で製作時間に時間がかかります。強度と速度との間で好みの設定をすると良いでしょう。
・シェル
これは造形物の表面の厚さのことです。これを厚くすればするほど強度が上がりますが、制作時間は長くなります。
3 .大きめサイズの造形物はパーツ分けしよう
3Dプリンターを使った造形物の制作にはけっこうな時間がかかることが分かりましたが、もし大きなサイズの造形物を作りたいなら注意点があります。
それは「大きなサイズの造形物はパーツ分けすると良い」ということです。さきほどの直方体の場合は制作時間に60時間以上もかかってしまいますが、この例に見るように大きいサイズだとマシンが稼働しっぱなしになるため、仮にトラブルが起きて途中で止まってしまったらやり直しになります。
そうなると材料がもったいないですし、それまでの制作時間も無駄になってしまいます。そのためあらかじめパーツで区切れる部分は区切って制作する方が、トラブル時のダメージが少なくなり効率的です。
4.まとめ
3Dプリンターは紙のプリンターほど高速に出力はできません。何時間、場合によっては何日もかかるケースもあります。
でも3Dプリンターのテクノロジー開発がさらに進んで、今後何倍何十倍も速く出力できるプリンターが登場する可能性は十分にあります。実際、従来の100~1000倍高速に金属部品を生成する3Dプリンタも開発されています。いずれ家庭用の比較的安い製品でも高速プリンティングできる時代が来てほしいですね。